バガタウェイ5


 
 
この作者の(現在の)限界はこの辺りだろうな。思ったよりもキャパはあったが、シンドイ時期が続いてるのではないかと思う。雑誌の方では読んでいないから分からないが、そう間違ってもいまい。
 
特にキャズムを超えられないのは苦しかろう。これは有る意味でしかたがない。本屋に置いてないものが売れるハズもない。これ以上、どう頑張ればいいのか?みたいな点で、どこかやり尽くしている感がある。
 
広域の不特定多数に向けた展開をさせて人気が取れる作家性ではないな。ならばこれと決めた1人だけのために特別にサービスしてテンコ盛りにしていくしかない。もっと厳しいホントウノコトを書いてしまえば「読ませたかったら、俺の所まで届けてみせろ!」が基本なんだ。精神論だとか根性論だとかの中途半端なものではなくて、その一念は具体的な実体としての岩をも貫かなければならない。本気で届かせようと思えば届くのだ。その程度の確信を持てない者は所詮はそこまで。がんばっていれば誰かが買ってくれる、かも?みたいな弱気では何も変わらない。
 
誰とはいわないが、世間のせいにする人もいる。この良さが分からないのは読者が悪いのだ、と。
人間100人いたら、100通りの考え方があるという。ホントかよ?と思うが、有る意味では事実だろう。しかし、逆に100人だろうが60億だろうが似たようなものでもある。肉体という同じ乗り物にのり、日本人なら日本語を使って、数千年の昔から変わらずくだらなくて愚かだ。最近は運動不足で体が固まって来ているぐらいの話だな。
マーケティングだのの小細工を弄するのも結構だが、シンプルに口をこじ開けて詰め込まなければならない。そして口に突っ込んだからには美味くなければならない。それが当然のことだ。「読者が悪い」みたいな寝言は通用しない。人々の考え方は違うが、同時に似たようなものだからだ。だだ一人に真剣に、深く通じればいい。心は繋がっている。トンでもなく嫌われて見せろ。他者の魂を、つまりは山を動かせばいいだけのこと。
 
こういうのが前提なんだ。こういうのが当然の前提としてあった上で、瑣末な技術論とかのオマケがある。才能はまだ必要ない。人気のあるヤツが才能があるとか言われてるだけだ。才能があっても、人気と結びつくかはまた別の問題だもの。
個人的に根性論はトドメぐらいの意味しかないと思っているしね。がんばっても、がんばっても、結果が出ないなんてことはザラだ。がんばることと、結果が出ることとは間にはなんの相関関係もない。その時の「がんばればなんとかなる」みたいなものは、よく吟味しなければならない。ただ冷たく、自分は何をがんばっているのか?を見つめることだけが問題だ。根性はなきゃダメだけど、根性ではどうにもならない。
 
正直、感触としてはコミックブレイドの編集はそう悪くなさそうだけどね。もっと売れてないのかと思った。少しマンガを多めに置いてる本屋にコーナーがあるなら十分だな。後は作家がどうにかすればいい。
 
 
さて、瑣末な方にいこう。
5巻は天神高校との対戦となった。印象としては、アイシールド21の王城ホワイトナイツがそのまま出てきてしまっている。(騎士だの白だののワードだけでそういう風に意識させようとしているのかどうかは微妙な辺り)ここでの対比がまるで成立していないことから、連載が始まる前に設定が出来てなかったであろうことが窺える。これが限界を指摘する根拠の一つ。
アイシールドの場合、王城を白=善とみなし、主人公チームのデビルバッツを黒=悪という形式で対比させていた。バガタウェイでは特にそういうものが見えない。加えて、天神高校のゴーリーゴールキーパー)は、セイバーだね。そういうのも正直、嫌いじゃないけど、捻りがないのはマイナスだ。独自性で負けているということだろ。謙虚になるのはいいけど、他作品に簡単にコウベを垂れるのはよくない。
 
限界を指摘する根拠の2つ目は、敵が塩を送る展開。これは小倉中央もやっているから二回目だ。これが作者の作家性、いわゆる「やりたいこと」「語りたいこと」に近い性質を持っていると考えられる。安易に繰り返してしまっているのは、理由は何にせよ、稚拙さの現れだろう。簡単に言えば、「もう一巡しちゃったんだろうな」ってことだ。その原因は、天神高校が王城と同じタイプになってしまっていることと同じで、構造的な強度や完成度の低さにあるのだろう。
 
さて、バガタウェイの今後の展開を考えると、九州地区の王者である天神高校がこのレベルのボスで、全国大会らしきがあるのかどうか知らないけど、あるなら日本の猛者と戦う展開になるかも?という感じ。
四極が居なくなった後を描けるほどの人気は出ないで終わるだろうから、この一年の話だろう。で、全国大会の決勝で当たる猛者を伏線で出して来ていないから、天神に勝ったら終わりとかが基本路線。やるなら、公式試合の1回戦とかで天神を破って、陣原と戦ってエンドとかもありうるのだけど、それもアイシールドで既にやっちゃっているから微妙だね。
参考にするべきなのはアイシじゃなくって、キャプ翼なんだが、手元にないし、随分前に読んだっ切りなんであまり詳しいことが書けない(苦笑) 今からすると、ローマ式同化モノなのかもしれない。南葛小と修哲小で勝って併合して、全国大会に挑んで、勝ちまくって、キャラの強いヤツを束ねて世界に打って出るんだもんなぁ。あの無闇なスケール感はなんだったのかねぇ?
 
少女ファイト」と比較すると、あっちは大会で勝つとかよりも別のステージで物語を作っているのがわかる。参考になるか?といえば、無理だろうね。バガタの方は王道展開させるしかないだろう。するとスラムダンクはどうか? 一行だと全国大会で山王を破って、疲れて負け、みたいな話だけど、ラストのパスみたいな〆を構成するものを用意してないだろうから、使いにくい。やっても、天神が山王になっちゃうんじゃないかなぁ。スラダンの続編は、あのラストパスに匹敵するストーリー上の「かなめ」が見付からない限りつくれないものね。
 
 
誤差だけど、絵のランクが下がっている印象。
画力は急には伸びないだろうから、背景背景!といいたいけど、人気が出ないと人数使えないだろうから、背景は逆に苦しいかもね。
 
ストーリー展開は、上記の点から苦しいし、今回は前フリだからそんなに面白いわけでもない。4巻の方がいいけど、それは試合の盛り上がる後半にドラマが集約するからでもあるわけで、仕方がない。
だけど例えば、アニスが出てくるのは当然にしても、こうアッサリでいいのか?みたいな部分はあるやね。
バックドアカットというのを見せたかったらしいのだけど、やるならまず「もう一点は無理かな?」とか大ちゃんとかに言わせといて先に残り時間をアナウンス。四極の過去をエグってミスさせ、パスが通った時に「まずい!」の一言などで強調。得点が四極のミスだって分からせる。そして点が入ったところでアニスのモノアイがビキュイーン的なシーンを入れるとかだよね。
 
 
負けてるとイラっとするのは、ファン心理的なものだから、悪くない徴候ではあるかも。またこれで半年後か…………連載が続くといいんだけどなぁ。今後も期待する。
 
 
過去記事
バガタウェイ1巻
http://d.hatena.ne.jp/adagium/20090815
バガタウェイ2巻
http://d.hatena.ne.jp/adagium/20090913/p1
バガタウェイ3巻
http://d.hatena.ne.jp/adagium/20100212/p1
バガタウェイ4巻
http://d.hatena.ne.jp/adagium/20100813