黄金の王 白銀の王

 
 
少なくとも0時半から書く内容ではない(苦笑)
以下、ネタバレあり。
 
 
●黄金の王 白銀の王(著:沢村 凛)
 表紙が、「まおゆう」の女騎士だなーと思ってスルーしたヤツでした。というか、大半の本はスルーするんで、記憶にある表紙ってだけですけど。
 えっと、某所で大傑作と言われていたので読んでみました。弱点は本が薄いことでしょうね。もっと大著であるべきかな、と。
 
 内容について触れてしまいますが、基本は「まおゆう」と同じ系統のストーリーです。
 最初に2人の王族が出会って、会話して、島国の覇権争いをどうにかして止めようとするっていう。系統がほぼ一緒なので比べてしまうと、物足りない「まおゆう」みたいな仕上がりです。バラエティーには富んでいませんが、コンパクトに纏まっているのは好印象で、短いこともあって要素が複雑に絡んで見えるのですが、口当たりはあくまでもソフトです。
 
 ただ名前が読めないので、漢字のイメージで「見て判断」っていうのが、好き嫌いあるかもです。これはどこか他の世界(どこでもない世界)に仕上がっている大きな要因の気もするので、読みにくいぞゴラァ!的な脊髄反射的な批判を言うのは自己中的な勘違いかな、と。
 
 物語を駆動するポイントは、妹ちゃんとの出会いなんですけど、「マジでそっち行くの?」という印象でした。読んでいない人向けに書いてしまうと、島国の中で2部族が長年覇権争いをしていて、島として疲弊している状態にあったわけです。現在の統治者の王が「外敵」から島国全体を守るために、捕えたままにしていたもうひとつの部族の後継者を呼び出して、争いを止めようと説得するわけです。
 
 この外敵が原因で争いを止めるパターンは定番ですよね。グレンラガンとかもそうなんですけど、むしろ日本的な視点の狭さとしてよく利用されやすい形式だと思われます。日本国内の問題としてしか物語のスケールを設定できないことが多々あり、日本はマクロ的な物語が作りにくい土壌かもしれないのです。
 幕末の、開国の圧力を感じながら国内問題をどうにかしていく物語と読み解けば、目新しさなんてゼロになりますからね(苦笑) この外敵の脅威を知っている側が正義っていうのが「もう飽きた」なパターンというか。
 たとえば韓国の歴史ものの場合、中国の脅威を基調低音としつつ、国内の問題を解決しようとする王(民のためを思っている善なる王様)が、利権バリバリの貴族・重臣達と対立するのが定番になりますからね。だから属国の癖に中国様を仇敵扱いするっていう(苦笑) 実際、重臣達の抵抗は凄まじいので、何作か韓国歴史ドラマを見ていると今作が物足りなく感じるほどですよ。
 
 話を元に戻すと、二人の王が居て、国は一つしかない。だから、血を一つにしてしまえばいいってのは普通に考えることなんですけど、そのまんまやっちゃうのです。まおゆうと違って主人公は二人とも野郎なので、妹をあてがうという。で、反対を押し切って無理矢理結婚させ、敵の城の中に独りきりで悪口罵られまくり。でも妻の気立てがいいのでちょっと救われるっていうのが基本ラインですね。
 
 でもまぁ、現在の王をやっている側が、好き放題にするために色々と手を打っていくのが見所ですかねぇ。銀英伝ヤン・ウェンリーが出てこない話というのが近いです。ラインハルトとキルヒアイスの物語というか。
 
 嘘のない気持ち良い関係が読後の爽やかさの秘訣かと思われるのですが、個人的に気になってしまうのは、主人公に悪口を言う無名の人々でしょうか。単にくだらないモブにしかなれないのですが、彼らのストレスはいかばかりかだったか?みたいなことを考えてしまいますね。
 まるで我慢していたのが主人公達だけだったみたいに読めてしまうのですが、変わるべき、変えるべき世界などというものは人間の中にしかないわけで、悪口を言わずに居られなかった人々の苦悩を黙殺してしまうと、かなり薄っぺらい物語になると思います。全能感を刺激するのはエンタメの基本かもですけどね。
 
 それと、「支払った犠牲が惜しくなる」を描かなかったのは少し勿体無かったですね。定番のドラマツルギーだと思うのですが。