マージナル・オペレーション

 
こいつはクマったくまーー!
 
 
マージナル・オペレーション芝村裕吏 著)
ひさびさに星をいくつにすべきか分からない。3じゃ低過ぎる。4が妥当? でも私の感覚は5だと言っている。いやいや、評点の辛いもめんたむさん(の中の人)がMAXの5点? えーっ。ってな具合。
 
最大のダメポイントは、1200円なところ。もうこれが一番のマイナスポイント。星海社、がんばりが足りなかったね。次点で、たぶん教科書過ぎるところかなぁ。オススメはしたくない。みんなは読まなくていい。でも俺は読むんだよ。だけど常識的に考えて、続編が読みたいので売れてくれないと困る。そんな作品。
 
今回はネタバレタグにして全力!とは思わなかったYO。いやぁ、勿体無いので止めとく。
 
芝村裕吏と言えば、ゲーム「ガンパレード・マーチ」でブレイクした変なおっさん。毀誉褒貶も激しいのですけど、なんだろう、作り手の人にあんまり聖人君子を求めていない私には、居てくれないと世の中がつまんなくなっちまう一人ですね。鬼才というほど鬼な感じはしないし、天才というにはちとしぶとい。かといってこの人を凡人の枠組みにはめて見るのは油断以外の何物でもないという。凄いですよね、実際。
 
震災の時は固定的な役割を押し付けた気がして申し訳ないような、でも私が知っている範囲だと危機的状況での安定性で頼みにできる知識のある人って、芝村のおじさんしか居なかったんだもの。たぶん頭3つぐらい飛び抜けてるでしょう。これ、下手に1人を頼りにするとその人が崩れたりした時に沢山の人がまとめてドミノ倒しになっちゃうから、ああいう時はつらいけどどうしても誰かを頼りにはできないし、しちゃいけないわけですよ。非日常での人間の性能なんて、そうなってみなきゃ分からないものなんで。
結果を分かっている人は分かっていると思うけど、お見事でございました。流石ですね。
 
私の個人評価ですが、知識量だと膨大すぎて勝負にならないです。そっち方面では本気で底知れないので、戦ってはいけない人ですね。
知識量が膨大な人にはひとつ罠があって、知識同士の関連性がどうしても低くなるのです。関連させないとケース毎にバラバラな意見になってしまうし、下手すると性格まで変わって来ちゃったりするんです。いい人だったり、ヒステリーだったりね。
要するに中心軸による処理が働いていないってことになるので、能力的に足りないと判断することになるんですけど、高い領域で知識の統合まで出来つつあって、どうにも手がつけられない、化物っぽい人です。まぁ、色々と情報誌を読んでいけば、それらからの直近の影響も受けていることは分かるのですが。
 
 
そんな人が書いた小説です。
んー、漫画原作もやっていて、ガンパレの「アナザープリンセス」とか、「われは剣王っ!!」なんかにはあたっているんですが、佳作を連発するタイプの物書きをする人、という判定をしていました。
 
 
今作は、30歳のニート民間軍事会社に就職するという内容。
ともかく教科書的な上手さがあります。小説にお手本なんかあるわきゃねーとも思うんですが、それが巧いんですよねぇ。伏線の張り方もそうだし、文脈や背景を踏まえて状況をきちんと演出していく点。読者を引き込むために出す女の子の使い方とかもそうですし、体験的な情報を小出しにする軽いリアリティの出し方とか。
 
日本は現代向けの物語がもっと必要だと思うのですが、海外ドラマ「24」みたいな作品はどうにも出てきません。風土が違うから真似しようとするとチープなものになってしまい易いのですね。「SP」やちょうど最終回を迎えた「ブラッディ・マンデイ」もがんばってはいましたが、「24」型の物語をどうにか後追いしようと足掻いた結果に見えてしまいます。
どうにか、この辺りに対応できる日本向けの類型が欲しいところなんですけども。というわけで、2巻の展開にはちょっと期待しています。
 
まさか地元の本屋で買えるとは思ってなかったぜぇ。