「凡庸からの脱出」と「異世界への冒険」


●風雲の出帆(海の覇者トマス・キッド1)
いつの積読だ?とかって思いながら読む。
英国海軍の軍艦(帆船!)に強制徴募(まるで奴隷のごとく!)された主人公が海の男を目指す物語。



ん〜と、そこそこ面白い。
中心にあるのは、トマス・キッドの成長物語なのだけど、これが異世界冒険モノになっているのがいい。
主人公は陸者(おかもの)と言われる海とはまったく関係ない世界の住人。それが無理やり軍艦に連れてこられてしまう。別にパラレルワールドとか異次元とか行かなくても「異世界モノ」にはなるわけです。



じゃあ冒険は?ってことですよね。



生まれた時は誰しもこの唯一の世界を特別なものとして捉えていたハズなのに、いつのまにやら自分の世界・日常ってのをある狭い範囲に押し込めてしまう。
多くの場合、世界ってものを他人と「共有したつもり」になってしまう。そこでは関係性(人間や場所との)が自分を同じものに させてくれる/してしまうわけです。
自己同一性だのは背景だの環境だのから見てやらないと面白くないわけで、環境に規定される自己ってとこですか。


我々もある程度成長してから「別の世界」に放り込まれると、その世界をある程度相対化して捉えることができるようになるわけで、そこには「冒険の余地」が生まれます。さらに異世界度が高ければ高いほど「冒険の余地」も大きくなるって寸法です。
この冒険ってのが成長と絡んで「凡庸からの脱出」だったりするのは最高のパターンのひとつですね。*1




少年の冒険心を煽る海の世界!
ネルソン提督周りに詳しいともっと面白いかもしれません。でも知らなくても楽しめます。異世界冒険モノなので、主人公も真っ白ですから。


そこで帆船ですよ。大砲ですよ。マスケット銃ですよ。
臨場感に溢れる異文化の薫り!!




…………これが非常に羨ましくない(笑)



めっちゃ寒そうで「見てるだけの幸せ」を満喫しました。

*1:もうちょっと現実でガンバロウよ!って言いたくなったりもしますけどね