グレンラガンのラストについて。

 
やはり、納得できない人も多いようで。
様式美って言われればそれまでなんですよね。
ラストをちょっと濁して作品の印象を強く残すとかって技かもしれないですし。 
 
私にしても、まぎぃさんの指摘による「宝島」とかって気が付いてなかったりします。そもそも宝島を見てないのでどうしようもないのですが、ある意味ではアニメに広く精通していなければ語る資格を持ち得ない作品でもあるとも言えるでしょう。
 
 
それでも自分が納得したいという気持ちが強く残ったのです。
本当に素晴らしい作品だと思うから……。
 
 
 
●「キタンが死んだ時点でバッドエンド」説
 
ヨーコが定型のパターンで幸せになるには、新しい恋をするぐらいしか無かったと思います。その意味ではキタンとの関係を死亡フラグとしてきっちり使ってくる辺りで隙がない。
 
しかもスペースキングキタンが潰れて、中からキングキタンが出てきて突撃する戦法はラストで踏襲されていることもあり、アンチスパイラルに勝つという条件下ではキタンからの「お前の遺志は受け取った(25話タイトル)」が必要な要素になってしまっています。
 
 
更に26話のヨーコの夢ではキタンとの結婚という妄想をアニキの前で突き付けるシーンがあったりして、処女であることが強く求められるかのような、女としてではなく螺旋の戦士として生きる決断をすることにもなります。
 
 
結果、ヨーコは一人なのにシモンはニアとラブラブといった「格差エンド」には成り難い。ヨーコも幸せに生きていくのでなければニアとのラブラブエンドには到達しなかったと思われます。
3人で始まった旅だけあって、ニアも邪魔ということですね。
 
当然のことながらアニキの存在が大きすぎて、シモンとヨーコがくっ付くことも在りえない……となると、順当にアニメのラスト通りに、ニアが消え、シモンもヨーコも一人で生きる展開になってしまうと思います。
 
 
30とか40とかになれば、理想とか綺麗ゴトとか純粋とかなんてまとめて脇においといて、なぁなぁでくっ付いても…………とか思ったりはしますが。




●ニアの消滅について
ニアが消える必然は上記の通りですが、
ニアが消えた直接の原因は、単に「気付くのが遅かったから」だと思います。
数話前からそんな話の展開になっていれば、それこそ道理を蹴っ飛ばしてニアを助けたでしょう。逆に言うと、ニアがラストで消滅するためにはギリギリまでバレてはいけなかったということになります。
  
やり方としては、ロージェノムが敵の攻撃を受け止めて粒子化し、ビックバン並のエネルギーを吸収した時にニアを螺旋生命へと変換するとか。父親からの命を受け取るのであればカッコは付きますし、エネルギー量からもさほど無理でも無かったでしょう。
 
結局、ギリギリの状況での判断で、シモンはニアに同意しました。
愛したが故に「彼女の選択」を尊重したわけですね。
 
 
 

●シモンの引退について
アンチスパイラルに宇宙を任されたはずなのに、ロシウに任せて去っていったシモンですが、英雄は役目を終えたら去っていくのが美しいという美学も確かにあります。
結局、螺旋力による破滅=スパイラルネメシスは絶対的な終焉だという位置付けになってしまっています。シモンの引退はスパイラルネメシスが発生しない程度に生きるという閉塞感を生み、「天を衝くドリル」とどうしようもなく矛盾してしまいました。
 
 
ではどうすれば良かったのか?と考えると、もはやスパイラルネメシスを発生させてアンチスパイラルとの共闘しかなかったのかもしれません。
アンチスパイラルもそもそも高い意識を持っていた螺旋族です。最後の最後に螺旋力と反螺旋力が合体して調和を生み出す第三のパワーに到達してスパイラルネメシスを終息させる、とか。
 
モビルスーツアクシズを押し返すぐらいの無茶ですけど、この手のありえない無茶をしなければ奇跡の先に光を見出すことは難しかったのではないでしょうか。
 
そしてアンチスパイラルの仮想生命であるニアと螺旋の戦士シモンの間に出来た子供は調和の象徴、希望となって終わる…………
なんてのを考えてしまいますね。
 
キタンを殺さす、アンチスパイラルと決着を付ける前にスパイラルネメシスの発生と撃破です。この場合はアンチスパイラルは味方になるためニアも消えません。
 
 
 
アニメのラストはスパイラルネメシスという共通の敵の前に全銀河の平和を構築することになったわけですが、この共通の敵というものが無いと螺旋族同士で覇権を争い続けることになったのかもしれません。
 スパイラルネメシスなんて実質的には螺旋力の高いごく一部の戦士にしかその本当の恐怖は感じられないはずなので、実感としての脅威としては弱いのですが、知性による理想の実現という意味では悪くないエンドかもしれません。



ここで考えたシモンによる超調和エネルギーなんてのは、自己実現からは遠い押し付けがましい新世界ですしね。(絵的にマクロスの歌っぽくなるかも)



●ヴィラルの夢
寿命も生殖能力もない彼は、消滅するまでは最前線で指揮を執り続けるのでしょう。
 
多元宇宙がみせた彼の夢ですが、そこには穏やかさがあった。
彼の顔に刻まれる攻撃性も生来のものではなく、外部環境によるものであることが示されていました。
たしかに甘い夢として彼の内面の願望が鋭く暴かれるだけのシーンかもしれません。
 
でも、あれは妄想なんかじゃなくて、きっと可能性の一つとして実在する時間だったのです。それは時間の向こうに永遠に保存されたのです。
 
なんでシモンはグレンのメインパイロットに螺旋力のない彼を選んだのでしょう? 勿論、彼でなければならなかったハズなのです。
 
 
しばらく、グレンラガンの余韻に浸りながら、答えを待ちたいと思います。