展開予想と黒い白鳥

 
くろうのだらオタ日記:その見方は、間違っている
http://d.hatena.ne.jp/crow2/20100204
 
ビッグウェーブに乗るゼ!的に無責任な更新を(笑)
基本的にくろうさんに賛成ですね。深くコミット(もしくは没頭・感情移入)してダメージ受けてヒィヒィ言うのが楽しいと思います。感情移入もチェック項目に入れようかなぁ。
 
 
展開予想に関してですがー、物語を十全に堪能することを考えた場合、展開予想をしないと時制が「過去」と「現在」(今週分)に限定されてしまうので、「未来」を加える方が正しいと(私は)考えます。個人的にゃ単に趣味なだけですけどね。
 
ただ受身な消費者でいてはいけない的な話とかってあるじゃないですか。もっと積極的になろうぜ!みたいな。生産性とのバランスとかって話ならその通りなんですけど、だからってネットで現実逃避してるって文句を言われる筋合いは無いわけですよ。「エンタメは現実逃避、以上。」でも間違いじゃありませんからね。ネットでの姿でリアルのその人が分かるかって言われても、そんなの分かったつもりになっても仕方ないわけで。
 
でもなにか「受身な姿勢」を否定したい感覚ってのがあって、つまりそれは「反射・反応するだけの機械」としての自分を否定したいってことなんですよね。親鳥が口にエサを放り込むのを、口をあけて待っているだけでは嫌だってことです。すると自分で狩りをしないといけないって話になってしまう。ここで「物語を作る側に回る」ってのがレンジに入ってくるんですけど、ショートストーリーを作るだとか、同人誌作るとかっていうのを含めて、「生産したからそれが正しい」と言ってしまうのはあまりに極論過ぎるんですよね。作らないと間違ってるだとか言われても困る。
 
こうして考えていくと、今回の話のように「より積極的に感情移入していくこと」だって攻めの姿勢に成り得るってことが一つあると思うわけです。それからメタ視を使って「展開を予想していくこと」も、攻めの姿勢になるでしょう。本当に先の展開が読めすぎちゃったら面白くないかもしれませんが、その場合は深く感情移入して読むってことでいいんだと思われます。第一、読者側が次の展開を予想することでその予想を裏切るインパクトの強い展開が成立するわけです。読者の予想はプレ-インパクト面を作っている。だからこそ、そこから先には作者が工夫する余地があるわけでもあって、展開予想ってのは既に組み込まれ「済み」でしかないものでしょう。そんなものを否定しても仕方がないって思います。
 
 
……で、肝心の物語の予想方法なのですが、どうやら無理っぽいです(苦笑)
詳しくあたりたい人は「ブラック・スワン」(ナシーム・ニコラス・タレブ著)などを読んでもらうことにして、ここではごく簡単に説明してきたいと思います。(ブラック・スワンまだ全然読み途中。上巻の半分ぐらいです)
 
えっと、展開予想するってぇことは、それまでの展開から考えられる次の展開を予想することになるんですよね。結局のところ「この方法」の場合、それまでの展開と論理的に断絶していたら全く予想できないことになります。つまり、作者が突発的にイベントを差し込めば読者の予想を裏切ることが簡単にできるってことなのです。この効果をリセット理論とか呼ぼうかと思うのです。(もののけ方式とかって名前だとあまりにヒドいので) リセットって再配置みたいな言葉(リ-セット)なんですけど、ファミコンの影響か、日本語だと「中断」っぽいニュアンスですよね。なので中断 → 再配置、みたいな。
 
実際、必死こいて予想したってまったくかすりもしない時がありますからね。でも当たりそうに聞える「まっとうな」展開予想をするには、それまでの文脈を踏まえてなければならないんです。けれどこの方法だとリセットには対応できないんです。例えば誰よりも早く最速でネタバレを読んで、その情報を予想として書いたとします。たまたま突発的なイベントが発動している話だとしたら、絶対に合っているハズのそれを読んだ人は「お前の予想って滅茶苦茶だろ。妄想、乙」とか思うわけですよ。しかし同じ人が本編を読んだ場合は「神展開キター!!」になるっちゅう寸法ですよ。この戦力差はどうにもなりませんって。
 
ここから考えれば、展開の先が読めるってのは、論理的に方法が限られている場合*1か、伏線*2が先に張られている場合に限られてしまうって感じじゃないでしょうか。それにしたって最近は伏線破りが平気であるんで、伏線があったからって全く油断ならないわけで(苦笑)
 
少年マンガみたいなジャンルの区分があれば経験やらパターン認識なんかがありそうなんですけどね。 ……で、プロップとかの物語(神話)の構造論も多少追いかけたりしたんですけど、やっぱり次の展開を読むことはできないってのが結論ですよね(笑) 千の顔を持つ英雄、つまり千に派生する構造を持っているものから、具体的なひとつを予想できるわきゃねぇってことです。
 
なので、最近は予想をしないことで予想していくってのが本命になってしまいました(笑) とある状況でありそうな可能性を網羅しておいて、どれかが来るんじゃないの?って感じで予想を「しぼらない」わけです。チキンと呼びたければ呼べっていう。でもこれでも黒い白鳥は飛んで来るかもしれないんですよ。黒い白鳥(いわゆる「ありえない」と思っているもの、予測不能性)が「いつ」やってくるかってのも予想できない。物語は論理の連続性で成り立っていながら、論理が破綻しない範囲で「あらゆること」が起こりうるという。破綻するかどうかってのも、そもそも後付けで収拾が付けばいいわけで、畳める腕力があればどんな風呂敷を広げてもオッケーなんですよ。(その意味ではヒロインキャラの殺害などは風呂敷を畳んでいるんだと思われ、新キャラの登場は広げていることになるのかな)
 
それから作者の思考をトレースする方法ですが、読解力を高める役には立つかもですけど、展開予想の役にたってはいないんじゃないかと思います。物語にはある種の「流れ」があるので、その流れが始まって以降は多少その流れを追いかける「安定した時期」が続くわけです。その時期にはある程度どうなるかが分かるものですけど、でもそれで分かったつもりになっても展開予想としては弱いし、規模も小さいんですよねぇ。
 
大体、当たる予想っていのは「その内、黒い白鳥が飛んでくる!(キリッ」(でも時期不明&内容不明)みたいな中味の無い「枠組みを指摘すること」であったりだとか、長期スパンでの方向性ぐらいでしょう。そんなの当たっても別に偉くもなんともないし。大勢になんら影響しませんね。
それならネタ出しでもして、作者がたまたま採用するっていうようなチートの方が1000倍マシです。予想を当てるんじゃなくて、アイデアの方を正解にしてしまうっていう(それも自意識過剰ですけどね)
作者が使えそうなアイデアを1000個も出せば、一つぐらいたまたま同じことを考えるかもしれないじゃん?(笑) ……考えてみればショートストーリーを考えたりと同じような「行為」かもしれない。
 
 
なので、安心してガンガン展開予想しようぜ!(←泥沼)
 

*1:例えばラカンを倒す方法だとか

*2:例えばラカンが造物主に歯が立たない→魔法世界人全体が被造物か何か(?)